days of atresure

ロサンゼルスのシェルターにいたRookie。Rookieの一時預かりボランティア中に、日本帰国が決まり、正式に家族として迎えることに。大変なこと、幸せなこと、最近では幸せなことばかり、、、綴っています。本ブログの画像および文章の著作権はmamiにあります。無断転載を禁止します。

映画『Temple Grandin(邦題テンプル・グランディン〜自閉症とともに)』

Temple Grandin [DVD] [Import]

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2010年にアメリカで製作されたテレビ映画『Temple Grandin』がCS放送で日本でも放映されました。
3月のJ:COMの放送プログラムで見つけてから、ずっと楽しみにしていた映画です。
テンプル グランディン氏は自閉症で一般人の感覚とは違う感覚を生かして、高名なアメリカの動物学者、そしてアニマルウェルフェア向上を目的とした家畜施設の設計者として大成功を収めています。
彼女は自閉症であるがゆえに、ふつうの人間が見逃してしまうような臆病で敏感な動物の鋭く繊細な感覚を理解することができます。
私は今まで彼女の著作を何冊か読みましたが、いずれもルーキーのことを知る大きな手がかりになりました。
動物感覚―アニマル・マインドを読み解く

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動物が幸せを感じるとき―新しい動物行動学でわかるアニマル・マインド

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上記2冊でラブラドールレトリーバーの記述は、一見楽しげでフレンドリーなラブラドールレトリーバーをルーキーが何故突出して苦手なのかのヒントにもなりました(ルーキーはある程度一緒にお散歩したり時間を共有することで、ほとんどの相手と一緒にいても大丈夫になるのですが、ラブラドールレトリーバーだけはいくら一緒にいても馴れずに徹底的に排除しようとします。ラブラドールは人間の視点から見ると、陽気で怒ったりしなくてフレンドリーで、ルーキーが犬に馴れる練習には理想のお相手に見えたので不思議だったのです)。
自閉症感覚―かくれた能力を引きだす方法

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今まで彼女の著作に出てくる、特に臆病な動物の心理や行動に関する記述に感銘を受けていましたが、この映画を見て、テンプル グランディン氏自身にとても感銘を受けました。


映画の中で、ふつうの人ならスルーできる些細なことが耐えられず、パニックに陥って暴れたり攻撃的になるテンプル グランディンの姿がルーキーに重なります。
そしてテンプル グランディンの恩師が母親に語ったなかで「あなた最良の選択をしてきた(当時、自閉症の原因は母親の幼少期の接し方に問題があって発症すると決め付けられていたが、テンプルが自閉症になったのは母親のせいではないと、恩師は母親を認めた)。彼女はこれからたくさんのドアを開けなければいけない。だけどあなたがドアを開けることはできない、あなたに出来るのは手伝うこと。彼女自身がドアを開けなければならない。」
「テンプルは普通とは違う。だけど劣ってはいない。彼女はすごい才能を持っている」といった主旨の言葉が心に深く残りました。


作中で大きく取り扱われていた「締め付け機」
締め付け機ではないけれど、同じ考え方で、身体を適度に圧迫することで気持ちをリラックスさせる効果がある犬の興奮や恐怖を鎮める「Anxiety Wrap」が販売されています。

日本では代理店は無いようですが、海外発送もしてくれます。似た商品でサンダーシャツが出回っていますが、両方使ってみて、Anxiety Wrapの方が格段に効果があると思います。サンダーシャツは綿ニット素材で締め付けが弱く、ちょっときついTシャツ程度の感じです。Anxiety Wrapは素材や締め付け感がアスリート御用達アンダーウェアのアンダーアーマーCW-Xのような感じだと思うとイメージしやすいと思います。
https://anxietywrap.com/default.aspx

いちおうサンダーシャツの画像も。

RUFFWEARのウェブマスターハーネス。平ひものハーネスではなく、RUFFWEARのようにがっちり身体をホールドできるハーネスも同じような効果があるのでは?とも思います。


テンプル グランディンのアニマルウェルフェアに則ったシステムは、家畜が怖がってパニックになりそうなものに対して、家畜に無理強いしたり、馴らそうと訓練するのではなく、それらを徹底的に排除していきます。
ペットの犬の場合は公共の場に出て行くわけですから、徹底的に恐怖の要因を排除することは不可能です。もちろんそれらに馴らしていく訓練もとても大事だけれど、他の犬より明らかに恐怖の感じ方が大きくパニックを伴うようなケースでは、自分自身でコントロールが出来ずパニックに陥るほどの恐怖に立ち向かわせないように、できる限り負担をかけないように、時間やルートをマネージングすることを併用していくこともまた大事だと思いました。
私はルーキーとの散歩ではなるべくルーキーに失敗させないように、ルーキーと他犬との間に距離を取るようにコースを変えながら歩いていますが、これをダメにするのがリードを着けずに放し飼いで散歩している犬達です。何回か放し飼いの犬達が突っ込んできたことのある場所をルーキーは明確に覚えていて、そのあたりを通る時は、通常の何十倍も興奮して神経質になり、普段は気にしないささいなこと(草むらで鳥がたてるカサカサした音や捨てられているゴミ、人間が手に提げているかばん等)に吠えて暴れてしまいます。



ルーキーは普通の犬とは違う

だけどルーキーは劣ってはいない(写真はアジリティで遊ぶルーキー。特にレッスンを受けたりしていないけれど、自発的に当たり前のように、私の指示する障害物をどんどん跳んで行きます)

ルーキーはすごい才能を持っている(水難救助犬のクラス。沖に浮いているボートを岸まで泳いで牽引してくれます)

ルーキーはこれからたくさんのドアを開けなければならない

だけど私にできるのは手伝うことだけ

ルーキー自身がドアを開かなければいけない